カフェパウゼをあなたと

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「そのニュース、ソースついてる?」デマの片棒を担がないために

今日は、Twitterの便利さと怖さとすばらしさを身をもって体験したお話。

Twitterのスピード感

三連休のさなかに、ちょっと心配なニュースが飛び込んできました。
ドイツの学校給食で過去最大の食中毒が発生し、現在、政府機関は冷凍いちごが原因かもしれないと疑っている、という報道がなされているのです。そして、メディアはそのいちごは中国産だと報じているとのことです。

朝日新聞デジタル
記事 2012年10月6日20時10分
集団食中毒、原因は冷凍イチゴ? ドイツ、政府機関発表

 ドイツ東部のベルリンやザクセン州などで起きた生徒・児童の集団食中毒で、ドイツ消費者保護・食品安全庁は5日、給食に使われた冷凍イチゴが原因である可能性が非常に高いと発表した。ノロウイルスが原因と疑われているが、まだ完全に解明されていない。
(中略)
ドイツメディアによると、イチゴは中国から輸入されたという。
(後略)

朝日新聞デジタル:集団食中毒、原因は冷凍イチゴ? ドイツ、政府機関発表 - 国際
このニュース自体も非常に興味深いのですが、今日はむしろこの記事配信時間に注目してください。
日本時間で2012年10月6日20時10分に朝日新聞は報じたようですが、実は、私はもっと早くに知ることができました。
Twitterのおかげです。



@さんのツイートが公式リツイート(RT)で流れてきて、確かにリンク先のドイツ誌サイトでも報じられていることを確認。「おお、これは大変!」と私も2つのツイートをRTしました。これが、日本時間で10月6日朝のことでした。

「それ、デマかもしれないよ!」警句が飛んできた

Twitterって凄いなあ、ドイツで住んでいる人からの情報も来るんだなあ、とニコニコしていた矢先。るう(@)さんこんな警句が飛んできました。


あっ!顔が青ざめました。そこで、取り急ぎこんな対応を。


問題はここにありました。

Sugitaさんにも理解していただけました。



お二人の快い許諾が得られましたので、今日の記事では私の行動のうち何が問題だったのかを振り返ってみましょう。

Twitterのツイート拡散の仕組みはツイート単位

何が起こったのか?

Twitterを使わない人、初心者の方にとっては、何が起こったのかわからないと思うので、以上の流れを一旦整理してみましょう。

まず、そもそも公式RTとはなにか。これは、自分をフォローしてくれている人、つまり自分が発言すると、その人の手元にまで届いても良いよ!と意思表示している人たちに、「こんなツイートがあったよ」と改変することなしに横流しする機能です。

TwitterのRTやメンションの仕組みについて、図解で説明してくださっているブログ記事があります。Twitter公式アナウンスではありませんが、私は一番わかりやすいと思ったのでリンクを張っておきます。

Twitterの公式RT、非公式RT、QTの違いを分かりやすく図で描いてみた - 聴く耳を持たない(片方しか)

つまり、上記引用のツイートの流れを箇条書きに起こすとこうなります。

  1. Sugitaさん、ドイツの新聞報道に気づく
  2. Sugitaさん、まずドイツの新聞報道自体を紹介するドイツ語ツイートを書く
  3. Sugitaさん、続けてドイツ語ツイートの意味だけを書いた日本語ツイートを書く
  4. ぱうぜがフォローしている方がSugitaさんのツイートを見つけて、両方を公式RTをする
  5. ぱうぜ、Sugitaさんのツイートを両方見つける
  6. ぱうぜ、一応デマの可能性も考慮して、ドイツ語ツイートの中身があっていることをリンク先で確認
  7. ぱうぜ、Sugitaさんのツイートをドイツ語ツイートと日本語ツイートを両方公式RT
  8. るうさんはぱうぜをフォローしていたので、Sugitaさんのドイツ語ツイートと日本語ツイートをみかける
必ず二つまとめて拡散するとは限らない

ここから先が問題です。
Sugitaさん→ぱうぜがフォローしている人→ぱうぜ までは、二つのツイートが連続で伝わっています。これは、少なくともこの3人はドイツ語も読んでいるからです。しかし、ぱうぜをフォローしている人(フォロワー)はどうでしょうか。この記事を書いている9日6時時点で624人がフォローしてくださっていますが、おそらくほとんどの方はドイツ語に慣れていない方だと思います。
・・・ドイツ語だけのツイート、読んでくれるでしょうか?また、読むことに意味があるでしょうか?
そうではありませんね。おそらく、日本語のツイートだけをRTするでしょう。それでは「中国産のいちご原因でドイツで食中毒」というセンセーショナルな記述だけが拡散してしまいます。るうさんはそれを恐れたのです。

善意のツイートでデマが拡散する

ソースがあれば「疑える」のに

東日本大震災のあと、Twitterでの情報拡散は非常に活発になりました。しかし、その時に問題になったのは、情報発信元の記載のない情報提供。それがしばしばデマを生んできたのはご承知のとおりでしょう。そうすると、「ソース示せ」ということになります。

新聞報道があっても更に「疑える」ことも大事

るうさんはそれをよくわかっていらっしゃって、「新聞報道があるからってそれでいいだろうか」と更に疑っています。もちろん、新聞報道自体が間違っている可能性もありますが、その点はSugitaさんも私も「疑い」であることを示しています・・・ドイツ語も含めると。でも、日本語ツイートだけではソースに遡って確認することができません。これでは、元の新聞報道を疑ってかかることはおろか、そもそも報道が実在するのかすら確認出来ないのです。

論文作法の根幹なのに

今回、非常に冷や汗をかきました。これ、論文のお作法の大元なんですよ。ソースを示すことで、何が担保されるのか。それは、少なくともそのような情報が存在し、自分の引用や拡散の仕方がそのソースから読み取れる範囲であるということを示すことになるのです。今回のように、「脚註があるにはあるけど切り離されている」状態の論文を書いてしまったら、それだけで研究者失格です・・・それって、「正しく疑うため」には必須条件なんですよね。

皆さんも気をつけて

みんなの常識を引き上げよう

結構Twitterには慣れていると考えていたのですが、ツイート単位の拡散であるという事柄の基本を忘れてしまっていました。みなさんも是非気をつけてください。
「一つのツイートの中に情報とソースを併記する」
これをみんなの常識にするだけで、根拠のない噂が拡散する危険性を少しでも減らすことができます。デマという危険に対抗するには、「みんなの常識」のセキュリティレベルを引き上げる必要がある。そう、この教訓は、Twitterにおけるセキュリティ対策なのです。

速報性あるツイートのおかげで

もちろん、Sugitaさんのツイートが、日本のメディアにも優るスピードで危険を知らせてくれたことは言うまでもありません。まだ確認はとれていないようですが、冷凍いちごでも食中毒になりうることを知っただけでも危険を回避することができるでしょう。過剰反応は禁物ですが、「疑い」があることを知るだけでも当面の行動が変わることはあるのです。

・・・もっとも、食中毒の「疑い」を政府機関がどのタイミングでどんな内容で公表すべきかと言う問題は、それ自体が学問的検討の対象です。日本でもかいわれとO-157について問題になりましたね。この続きはweb・・・じゃなかった、論文で書けるように頑張ります。

「そのニュース、ソースついてる?」を心にとめて

善意で良い情報を提供してくださる方が居なくなってしまうと困る。しかし、デマ耐性のない社会はもっと困る。そうはわかっていても、善意の相手に警句を発するのは勇気が要ります。ぜひ、日常的に確認しあう癖をつけましょう。
「そのニュース、ソースついてる?」

謝辞

Sugitaさん、るうさん、情報提供と警句をいただいただけでなく、ブログ記事化までもご快諾いただきありがとうございました。

それでは、皆さんもよりセキュアで愉しいカフェパウゼを。