質問や振り返りを助ける「研究会ノート」の取り方
研究会あるある:「質疑応答冒頭でまごまごしがち」
大学院生時代からの悩み
研究を志す大学院生のみなさんにお尋ねします。私が参加する研究会では、30〜45分ほど報告者がしゃべった後に、すぐに質疑応答の時間になることが多いです。そのとき、あなたは質問をすぐにすることができますか?その質問は練られたものになっていますか?
私も大学院生の頃から、これがなかなか難しくて困っていました。紆余曲折を経て、現在暫定的にやっている方法がとりあえずしっくりきたのでご紹介します。
とはいえ、研究会の内容をここで載せるわけにもいかないので、オンライン上で公開されている研究会のような対話を素材にノートを作成しました。それが冒頭の写真です。
今回のお題:大学設置不認可処分が出ていたとしたら、どうなるの?
先週、田中真紀子文科大臣が大学設置不認可処分を出すんじゃないか、と大騒ぎになりました。Twitterでももちろん話題になったところです。すわ、法的対応を!そんな中、ジャーナリストの江川紹子さんが発した疑問から、Twitter上でのやりとりがありました。そこで、自分もなぜか発言する流れになったので、その流れに至る部分だけをノート化しました。
時系列でのまとめがあるので、以下、ご参照ください。
田中文部科学大臣は個人で賠償責任を負うか? - Togetter
「三本線ノート」のすごいところ
この方法は、三本線ノートというノート術を元にしています。

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二冊ありますが、前者が考え方の基礎、後者が事例集です。
この方法のポイントは、見開きでノートを使い、3本の線を引くことで、適宜区分けして使うところにあります。
写真のとおり、むかって左のページに十字を書き、右のページは真ん中に一本線を引くのです。
これにより区分けをしたスペースは、左側はメインの流れを書くところになります。細いところは日付・タイトルを書く場所、メインの流れを発言者名込みで書く場所です。そして、右側には、自分の考えや、メインの流れへの反応として出てきたことを書きます。これにより、発言者の意図を書くべきところと、自分の意図を書くところを区別することが出来るのです。
・・・文字だけで説明するのはわかりにくいので、以下、写真をもう一度見てみましょう。
研究会でのノートの取り方
報告や質疑応答のやりとりを聞くとき
結構文字が詰まってしまっていますが、研究会で他の人の発言を聞くときには、ピンクの文字が添えてある部分を書き込みます。まず、研究会が始まるときに日付とテーマを書きます。忘れてしまったら、とにかく日付だけでも書いておきましょう。テーマは後から見えてくることもあります。
報告者が報告した内容や、他の人が話している内容を、左ページにかきつけていきます。Twitterとノートを比べてもらえばわかるとおり、逐語で起こそうとするのではなく、ポイントを書けば十分です。
自分の「心の声」を書き付ける
そうしながら、自分が疑問に思ったこと、感心したことを右ページの左側の列に書き込みます。単に「?」「!」を打っておくだけでもかまいません。あとから自分がどの部分に引っかかりを感じたのかがわかるようになっていれば良いのです。そして、報告が終わって、質疑応答に入るときに、おもむろにこの部分を読み返します。そうすると、自分がしたい質問や、すべき発言がわかるというわけです。
・・・自分が発言しているときは左ページにも書きますが、これは結構難しいので、右ページでのメモをもとに、あとから書き込むことが多いです。つまり、右ページは、発言の下書きをしておくスペースでもあるのです。
あとから振り返る:まとめや更なるネタを書こう
そして、研究会が終わった時点では、一番右側のスペースは空けておきます。ここは、後から読み返すタイミングで書き込むことになります。今回も、新しい論文のネタが仕込めたようですね。つまり、矢印のように、右へ、右へと読んでいくわけです。
実感しているメリット・デメリット
メリット1:自分専用のタイムラインを作れる
これはTwitterユーザーにしかわかりにくい例えなんですが、このノート術は、メインのタイムラインと自分の(非公開)ツイートのタイムライン、そして後から振り返るタイムラインを作るのとほぼ同じ作業をしています。
特に、発言者の発言に自分のコメントをそえる、なんていうのは、メンションや非公式RTと似たような感覚です。
必要があれば、公開ツイートでメンションを飛ばせば良いのです。
メリット2:過去・現在・未来の自分との対話が容易になる
さらに重要なことは、Twitterと同様、そのときどきの「心の声」をひろうのに適したフォーマットだということです。
しかも、Twitter本体とは異なり、未来の自分用のスペースがあります。ここで、過去、現在、未来の自分との対話も可能なのです。
唯一のデメリット:ものすごくページ数を使う
かなり効果のある方法ですが、一つだけ問題が。それは、結構ページ数を使うことです。今回、むりに2頁に収まるようにノートを書きましたが、本当は途中で区切ります。そうしないと、読みにくいですね。また、研究会終わった時点では余白がたっぷりある状態になりますから、もったいないと感じることでしょう。
しかし、その余白を埋めたい、という感覚こそが、自分のなかで更なる対話を生み出すきっかけとなります。
おわりに
研究会に特化してご紹介しましたが、ほかにも色々な使い方があるフォーマットです。また、飲み会でやってみても面白いと思いますよ。
それでは、皆さんも、周りの声だけでなく、自分の声も拾って、実りある質問タイムを。