カフェパウゼをあなたと

コーヒー片手に語らいを!わたしと、みんなと、そしてあなた自身の過去・未来と。

自分の名前を使わせてほしい!パスポート「別名併記」(両姓併記)利用者の切実な願い #ぱうぜトーク

複数の立場と視点から本気のお願いと怒りを込めて

さきほどPodcast「ぱうぜトーク」第6回から第8回を配信しました。
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テーマは「ドイツにおける名前トラブル」。この2か月ずっとこの問題に悩まされていて、とりあえず言葉として吐き出してみようと思って収録したらやはり整理しきれていないので、ブログ記事にしたいと思います。

根源的な権利のはずなのに

一言で言えば 自分の名前を使い続けさせてほしい
というのが正直な感想です。それは、単に個人としての感想ではなく、ひとりの研究者として、デジタル化していく社会における根源問題としての「名前」問題であると思いました。以下、私が直面した問題の紹介とその原因を分解していく作業として、この記事を書きたいと思います。

青野社長のツイートから受け取る危機感

もっとも、端的にいえばサイボウズの青野社長がいうこのツイートにすべてがこもっています。

「法的に根拠がなく、国際的そして法的に重要な場面では使えない」

そうなんです、それが最も問題。上記ツイートでも引用されているように、パスポートに限らず、免許証における旧姓併記がはじまるとのことです。ある親友は「これで一歩前進かな」といって紹介してくれたんですが、私にはどうしてもそうは思えないのです。

ドイツで直面したトラブル

まずは問題抽出のために、ドイツで直面したトラブルを列挙してみます。どこまでが「選択的夫婦別姓が認められていないことによる弊害」なのか、それとも「単なる日本とドイツの習慣の違いのせい」なのか、あるいは「研究職特殊事情」なのかの判断は、あとで考えることにしましょう。「ぱうぜトーク」第6回から第8回で話したことを列挙しつつ、補足を加えます。

前提

当事者:横田明美。岡島さんと結婚したので現在の戸籍名は「岡島明美」。2013年3月に東京大学にて「博士(法学)」の学位取得(課程博士)。現在、千葉大学准教授。在外研究を始めるために事前に2018年8月の旅券(パスポート)更新時に「別名併記」申請を済ませ、「別名併記」の例外の適用を受け「Akemi OKAJIMA(YOKOTA)」と表示された旅券を受領した。申請時には学部長のサインが入った証明書と博士号の証明書(横田明美名義)を持参した。

外務省公式サイトによる説明

なお、外務省公式サイトでは、

渡航先国の出入国管理当局等は,必ずしも日本旅券の別名併記制度に精通していないことから,旅券に括弧書きで記載された別名の意味が理解されず,説明を求められる場合があります。 このような場合,まずは旅券の所持人が御自身で旅券に併記された氏及び(又は)名について御説明いただく必要があります。その際には以下にあります英語版資料を御活用ください。」

として、英語版資料が掲載された(令和元年6月26日付)。これは河野外務大臣(当時)がツイッターでの利用者の不満を聞いて対応したものであり、当事者もそれを見ていたために英語版資料も持参して渡独した。

www.mofa.go.jp

問題1:郵便が届かない

事案の概要

10月1日に現在の住居で住みはじめ、郵便受けと呼び鈴と玄関に苗字を表示する必要がある。大学からの郵便は横田で、公的機関からは岡島で届く可能性があるため、大家に両姓が併記された旅券を見せたうえで、両姓を併記するよう依頼した(*注意:この説明はものすごく大変。英語がいちおう話せるけど苦手な人も多い)。結果、「Dr.OKAJIMA-YOKOTA」という表記をしてもらうことになった。しかし、2週間もの間郵便や宅配が一切届かなかった。

被害

2日に行った住民登録の結果受領すべき書類(社会保障番号が記載されており、それがないと銀行口座の開設ができない)が通常1週間で届くところ、受領までに3週間かかった。それ以外にも、携帯電話会社からの住所確認が届かず5日間回線が寸断された。携帯電話会社に上記事情を説明するためには本人による電話での問い合わせが必要であり、自動応答音声を聞き取るための語学力が足りないために困難を極めた(例外取り扱いのため)。郵便にも問い合わせたが、いくつかの郵便物は未達のままとなった。それ以外もいろいろあるが以下省略。簡単に言うと、最初の1週間に申し込んだほぼすべての手続きがやり直しになった。

想定される原因と解決

ドイツではハイフンでつながった姓も一般的なので、「OKAJIMA」さんと「OKAJIMA-YOKOTA」さんを別人だと思った可能性がある。結局、「OKAJIMA/YOKOTA」と表記しなおすように強く要望したところ、「これでは二人居住していることとなり非常に奇妙である」と渋られたが、上記事情を説明してなんとか了解を得た。また、「Dr.OKAJIMA」についてもトラブルとなりかねないため、Dr.も外してもらうことになった。上記措置をした後は未達となっていた郵便のうち半分は再送されて届いた(残りはどこ行った…)。

問題2:web登録でどのように入力したらよいかわからない

事案の概要

ドイツにおいて公的な身分証明は旅券(パスポート)だけである。そのため、本人確認が必要な場合は、すべて旅券を提示することになる。旅券に記載されている通りにホテル予約サイトや各種会員登録(その中には、ドイツ鉄道(DB)のBahnCardのように、本人確認が必要なタイプのものもある)などでパスポートの記載通りに”Akemi OKAJIMA(YOKOTA)”と入力しようとすると、いくつかのサイトでは「()」の文字が受け付けられないという理由で入力ができなかった。そのため、仕方なくOKAJIMA姓のみを入力した。 しかし、そうすると今度はTitel(学位)欄との衝突が生じる。ドイツでは博士号の有無と教授資格の有無は郵便受けに表示するくらい一般的に表示される項目であり、ほぼすべてのweb登録がその欄を有している(ある友人によれば、アップグレードが優先されやすいなどのメリットもあるようだ)。そのため、偽りなくDr.を選択したあと、上記のNachname欄にYOKOTAを入力することができないために、実際には存在しない「Dr. Frau Akemi OKAJIMA」という表記名で登録されることになる。これでは、(仮に)学位証明を求められた場合、それを証明する手段はない(東京大学(学位を出した大学)・千葉大学(現勤務先)発行の証明書や研究者としての公刊物やwebサイトはすべて横田名義)。

想定される原因と解決策

原因は、公的証明書はすべて戸籍名、学位・職務上はすべて旧姓であるということ。マインツ大学(受入研究機関)での混乱をさけるために、受け入れ教員には両姓併記(ただし、YOKOTA(OKAJIMA)の順)での招待状を出してもらうことで各種申請(特に重要な「研究者としての例外条項」を使ったマインツ大学と外国人局が今年から始めた滞在許可発給迅速制度)はトラブルなく進行した。しかし、「パスポートを旅券としてではなく本人確認書類として用いる」場面においては、解決策がほぼない。なお、結果として発給された滞在許可には、OKAJIMAとしか表記がない。

一般化できる内容かどうか考える

なるべく詳しく書こうとしたら長くなりました。さて、上記のようなトラブルは、どれくらい一般化できるのでしょうか。当初、旅券の例外としての「別名表記」の典型例である、仕事上の必要性というパターンでしたから、気を付けていればなんとかなるかな、と思っていました。しかし、想定以上にトラブルが多く、自分としては慎重に対応していたつもりでしたから、とてもショックが大きいです。

これは研究者特殊事情なのか?

「まあ研究者ならそういうことあるよね」という話なのかもしれませんが、博士号取得が日本とは違って一般市民にとても一定の尊敬をもって受け止められているこのドイツという国で、まさか「自分の名前を奪われている」苦しみに代わってしまうとは思いもしませんでした。とはいえ、滞在等には相手の招待が必要だということは研究者以外の滞在でもあるはずでして(とくにビザが必要な相手国の場合は招待なしに入国すらできないかも)、研究者特殊事情と断ずるにはまだ早い気がします。

本当に「デジタル化」対応できるの?

また、上記外務省の説明にもあるとおり、これは例外取り扱いです。そうすると、物理的に表示されている内容と、ICチップに内蔵されて機械的に読み取れる内容が異なるということになります。となると問題になるのが、デジタル化が進めば進むほど、この乖離が決定的になるはずなのです。

免許証の両姓併記で何が起こるのか

今回使ってみて思ったのは、「旅券としてではなく本人確認としての使い方」でのトラブルでした。その点、運転免許証は「運転免許の証明」よりは「身分証明」として用いられることが多いと皆がわかっている書面です。そうすると、「結局相手が受け入れてくれるかどうかわからない」という問題が、さらに拡大するのではないか、と懸念しています。 これは、あたかも、「同性パートナーの存在を相手が許容してくれるかわからない」問題と似ているように思います。そのために、公的パートナーシップ条例がいろいろできていますが、結局「相手が許容してくれるかわからない」問題は残っているんです。

法的に認められる、ということ

最初から、端的に認めてください。自分の名前を、法的に使わせてください。相手が許容してくれるかどうかに依存するなんてもうまっぴらです。本当にデジタル社会に移行する前に、「こちらが選んだものを、相手に受け入れてもらえる」保障が欲しいです。

まだ煮詰まっていないですね…

書き下ろしてみてわかりましたが、まだ煮詰まっていないと思います。しかし、今の段階で、記録しておくことにも価値があると思いますので、このように書いてみました。 なお、研究テーマにもかかわる内容ですので、この話題について「ぱうぜ」に用がある方も、「横田明美准教授」に用がある方もどちらも歓迎します。 上記内容についてはPodcastでも配信しています(第6回から第8回)ので、ハッシュタグ付きツイートを歓迎します。

anchor.fm

それではまた。

Podcast 「ぱうぜトーク」第1回から第5回まで配信はじめました

Podcast 番組を開始しました

みなさん、Anchorというアプリご存じですか?それ以前に、Podcastってなんだかわかりますか?いわば、音のブログ、といったところでしょうか。今回、Anchorを使うとPodcastが手軽に配信できるよ、ということを教えていただきましたので、はじめてみることにしました。

ぱうぜトーク • A podcast on Anchor

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とりあえず5回分やってます

現在、第1回から第5回まで配信しています。テストもかねて、各話のリンクを紹介します。

第1回 ぱうぜ研究室inドイツへようこそ!

第一回は自己紹介とコンセプト、ですね。オープニングはともかくエンディングはちゃんとつけなきゃということなのですが、初回なので噛みました…。このブログをお読みの方ならご存じでしょうが、Podcastでははじめまして、の方々も多いので、書籍の紹介をしています。

第2回 なぜPodcastTwitterとブログの間に

第2回は、なぜPodcastをはじめることにしたのか、という話。こういう楽屋話好きですね私…。

なお、ここで紹介しているPodcast番組、「外資系裏技英語」は本当に面白いのでお勧めです。大学サークル時代の友人でもある芸人・石井てるみさんが配信しているので聞き始めたんですが、人気急上昇中なのもうなづける内容。元気が出て役にも立つ、という。

www.okomedyaki.com

第3回 ドイツ暮らしでもっとも大事なこと

第3回は、最初の1か月で友人たちふくめ4人が全員感じた、一種の「あきらめの境地」についてお話しています。

いやはや、ほんとにいろんなことがあったよ…。

第4回 最初1ヶ月のドタバタ手続き

第4回は、ドイツで暮らし始めると1か月にどんなことが起こるのか、という話。今後のエピソードの予告も兼ねています。

この回の末尾で紹介した本、星野恵子とワーホリ仲間たち『ドイツdeワーキングホリデー』(イカロス出版、2018年)はこちらです。

第5回 はじめての在外研究のポイント

第5回は、ドイツに限らず、研究で外国暮らしをする前に気を付けておいたほうがいいかな、と思うことについて話しました。

ここもネタの宝庫なので、予告編的な内容ですね。滞在地の選び方、iPad ProとApple Pencil第二世代、eduroam、研究用VPN、現地語字幕アニメ視聴など。

皆さんにお知らせ

Podcastにまだなじみがないひとも多いかもしれないので、注意事項とお願いを書いておきますね。

配信されるまでに時間がかかるかも?

今回はじめてポッドキャストを収録して配信してみたんですが、各種podcast配信サイトに登録されるまでにはちょっと時間がかかるようです。登録されましたら、またツイッターでおしらせします。各種サイトで登録をしてもらえれば、早めにDLされるようになるので、そのあたりよろしくお願いいたします。 私自身は、Anchorで作成されたpodcast番組は、こちらの記事を参考にしてOvercastというiOSアプリで登録して聞いています。

goryugo.com

scrapbox.io

Twitterハッシュタグ #ぱうぜトーク 使ってください

番組のシェアや、感想や質問はハッシュタグ #ぱうぜトーク で拾いますのでよろしくお願いいたします。

実は「第0回」があります

自分でいちからやるのは大変だったので、Podcast配信をすでにしている「先輩」の教えを請いました。その回もすでに配信されています!

らした先生、ありがとうございました。Twitterで助けを求めたらちゃんと反応していただき助かりました。

ドイツ連邦政府・データ倫理委員会意見書(2019年10月23日)が公開されました

ドイツの連邦政府レベルでのAI利用に関する倫理的・法的な専門委員会意見書です

2019年10月23日付で、ドイツ連邦政府・データ倫理委員会(Datenethikkommission)が、意見書を提出したとの報に接しました。意見書本体(240ページ、ドイツ語)と概要(32ページ、ドイツ語と英語あり)は、以下のページからダウンロードできます。

https://datenethikkommission.de/gutachten/ (ドイツ語版サイト、上記すべてDL可能)

同委員会の英語版サイトのトップからも、英語版要約がダウンロードできます。 https://datenethikkommission.de/en/

ざっとみてみると

さすがにこの分量だと全部を読むのはまだ無理なのですが、要約版をざっと読んだうえで、目次を翻訳しました.

要約版の目次

  • 主導的考え方 Leitgedanken (Guiding motifs) 05
  • 一般的な倫理的・法的原則と原理 Allgemeine ethische und rechtliche Grundsätze und Prinzipien (General ethical and legal principles) 06
  • データ Daten (Data) 08
  • アルゴリズムシステム Algorithmische Systeme (Algorithmic systems) 17
  • 欧州の道のために Für einen europäischen Weg(A European path) 27
  • データ倫理委員会の構成員一覧 Mitglieder der Datenethikkommission(Members of the Data Ethics Commission) 28

本編目次

  • 要約 Executive Summary 12
  • 導入 Einleitung 33
  • 倫理的・法的原則と原理Ethische und rechtliche Grundsätze und Prinzipien 39
  • 技術的基礎 Technische Grundlagen 49
  • 複合的データエコノミーの多層レベルガバナンス(多層的制御)Mehr-Ebenen-Governance komplexer Datenökosysteme 67
  • データ Daten 79
  • アルゴリズムシステム Algorithmische Systeme 159
  • 欧州の道のために Für einen europäischen Weg 225
  • 付録 Anhang 229

話題になっている個所

先日、若手研究会に参加し、また、マインツ大学内でもデジタル化社会についての連続講演会があったのですが、そのどちらでも触れられていたのが、アルゴリズムの利用について、5段階のリスク分類に応じた制御をすべきである、と提案している点です(要約版20-21ページ(図は20ページ)、本編173-182ページ(図は177ページ)。この図解はKritikalitätspyramide(Criticality pyramid 脅威度ピラミッド)と名付けられています。(もっとも、Kritikalitätとは(核分裂の連鎖反応における)臨界を示す語なので、ちょっとこの用語法にはびっくりしました。) 英語版要約20ページから図を抜粋します。

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Criticality pyramid, in: the Federal Government’s Data Ethics Commission, Executive Summery of Opinion of the Data Ethics Comminssion, p.20

今後の動向は?

先週公開されて以降、ツイッターの #Datenethikkommission でも様々に議論されていますし、今後ドイツでの議論はこの報告書をたたき台に行われると見込まれます。英語版要約が同時に出ているのは、欧州や世界規模での議論喚起も意図しているからだと思います。

この記事について

本来、研究室のブログで書くような内容ですが、ちょっとトラブルがありまして更新できないことと、速報性を重視してこちらのブログで紹介しました。なお、翻訳も急いでやりましたので、訂正・改善提案などありましたらお知らせください。

マインツ大学(ドイツ)での在外研究をはじめます

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ライン川を渡る橋から撮ったマインツ(2019年5月撮影)

はじめての在外研究、久々のブログ

長らく更新が途絶えていた当ブログですが、この度、2019年10月から2年間の予定で、ドイツのマインツ大学(ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ)にて研究滞在を行うことになりましたので、記録を兼ねて、更新をしていきたいと思います。 「ブロガーから研究者になった」と自称している割に、ブログがとまっていました。これまでずっと「はてな記法」で書いていたため、Markdown記法にも慣れていないので、この際、「初心に帰る」つもりで更新していこうと思います。本記事はその予告編です。

現在の状況

10月1日からなのに、なぜいまドイツにいるかって?それはですね、住所が決まらないとどうしようもないからです(苦笑)。何はなくとも住所、そして住民登録(die Anmeldung)。最も怖いビザ(滞在許可証、die Aufenthaltungserlaubnis)を取るにも、プリペイドではない携帯のSIM契約をするにも、まずは住所です。これは、行政法研究者としては当たり前の知識ではある、わかってました。けれども、住居が見つかるまでの心細さって本当に実感してみないとわからないですね・・・。 大学併設のゲストハウスに入れなかったので、大学のWelcomeセンターとHousingセクションに相談するために、弾丸出張もとい弾丸有給休暇消化旅行として16日深夜から24日の予定で来ているというわけです。 で、ご紹介していただいたところで、なんと1発で見つかった、と・・・。有能なスタッフと親切な大家さん、隣人に感謝です。

とても運が良かった

このように、現在の状況は、「びっくりするくらい運が良かった」というところ。 いま現地時間の5時(時差ボケが治らないのを良いことに早起き・・・)ですが、これから朝一番にAnmeldungに並んで、そのあと大家さんといっしょにIKEAに行く予定です(これも、普通ではありえないことですね)。どうしてこうなったのかについても、おいおい記事にしていきます!運の良さが今日も続くと良いなあ・・・。

ブロガーから研究者になった私のゼミにαツイッタラーが道場破りにきた話

教員側からのSide-B

こちらのエントリは、ゼミ生が懸賞論文で入賞したことをお祝いするために担当教員が書いた、アンサーエントリ(アンサーソング的な記事)です。

え、記事タイトルと印象が違うって?いや、合ってますよ。 まずは当該ゼミ生が書いた記事を読んでください。 dustcroon.hatenablog.com

当該ゼミ生は、あのゴミクルーン氏(以下、ゴミクルさん)です。フォロワー63000越え(2019/04/27時点)のいわゆるαツイッタラーです。こっちもそれなりにフォロワー多いはず(4600超)なんですが、単純計算で14倍以上差があります。もちろん入学当時から千葉大学教員の間でも彼の存在は認知されており、在学4年間、話題に事欠くことがない学生でした。

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歴代のゼミ論集。卒論からレポートになったはずなのに結構分厚い!

そんな彼が、上記の通り私のゼミで書いたゼミ論文を投稿して受賞するという大変おめでたい話で、教員冥利につきるわけ・・・ですが、教育実践だからといってこの話を研究者としての公式ブログ(横田明美研究室)に書くのはなんか違うなあと思いまして、こっちのブログに書くことにしました。 なぜなら、この話は「ブロガーから研究者になった私のところに、(学部生時代の自分の危なっかしさを思い起こさせるような)αツイッタラー(炎上気質)がやってきた話」だからです。

・・・長いよ。記事も長いです。 以下、教員倫理を踏み外さないようにしつつ、主としてブロガー人格でお話します。アンサーエントリなので、上記記事からの引用に応答する形式です(以下、明示のない引用は全て上記記事からの引用です)。この記事は、教員サイドからみたいわばSide-B(ぱうぜ教員からみた顛末記)なわけでして、学生からみた視点と、教員側視点を両方合わせてみると、「大学における学びとは何か」「法学系学部における論文指導とは」など、ちょっとしたFD(ファカルティ・ディベロップメント)資料になることも狙って書いてみます。

まあ、本音を言えば「久々に時間をとって長文エントリを書くネタが向こうの方から突撃してきた(しめしめ)」という、ブログ書き垂涎状況を逃してなるものか、ということです。普通の大学教員を期待して読み始めた皆さんごめんね。ここのブログ主はそういうヤツです。あと、今回は特にゴミクルさんブログ読み慣れている人向けに書いてますので表現中のネタ度5割増しです。

ゴミクルーンの道場破り

まずは、元記事よろしく時系列にそって振り返ってみることにしましょう・・・って、これ、最初のところ、あたしが記憶しているのと違うぞ。

情報処理という科目が、あったような

まず、問題の箇所はここですね。

千葉大学政経学部法学コースには、1〜2年間所属して卒業論文を書くようなゼミがありません。半期単位で履修できる法学演習という科目群がその役割を担うことになります。それもあってか、卒業論文を課する法学演習がありません。

 ですが、1つだけ、過去に卒業論文の作成・指導を行っていた演習が開講されていたので、そちらの先生の元に伺いました。

 もともとその先生とはTwitter上で面識がある方だったので、話はとてもスムーズに進みました。やっててよかったTwitter

ええと、ちょっとまってねゴミクルさん、確かにTwitter上での面識はありましたけど・・・あったけど・・・

その前に情報リテラシー科目「情報処理」でお会いしてますよね(にっこり)。

というかですね、私が担当する情報処理に、過年度生がひとり入っていて、それがたまたまゴミクル氏の中の人だったわけです。ええと、一年時ではなくて、過年度、つまり2年次の再割り当てのときですね。ハッキリ言って奇跡的です。というのも、毎年担当する教員が固定されているタイプの科目ではなく、一年生向け科目の割り当て分担上誰が担当するか決めるのです。そして、今ではこの科目を担当するのは3回目(後に情報リテラシーという名前に変わっており、2019年度も担当しています)ですが、よりによってはじめて担当する年度にαツイッタラー引き当ててしまったのです。これ、自らTwitter廃人でない限り、教員としてはパニックになるところです。 しかも当時のゴミクルさん、全力でぶっ込むタイプのα、でして・・・ええと、皆までは言いません。

その当時のことを今思い返してみますと、リアルでお会いするまでは、ゴミクルさんとのオンラインでの距離は意識的に取っていたのでした。一応、入学当時から話題となっていたアカウントでしたが、長年ブログ・Twitterのオンラインに常駐している者として「教員がからむとややこしくなる」というのは学生目線でよくわかっていました。 ええ、学部4年生~ロー卒業直前まで書いてたブログを、東大法学部教員と行政法学界のけっこうな人数がリアルタイムヲチしてましたからね? ということで、教員アカウント(@akmykt)でもブロガーアカウント(@kfpause)でもフォローせずに生暖かく見守っていたわけですが、なんと先方からぶっ込まれるとは思わず・・・ええと、情報処理教員として必要なことはしました。オフライン・オンラインの使い分けが大変でしたが・・・たしか、その過程で色々な本を貸した記憶があります。思えば、その頃からゼミ指導は始まっていたのかもしれません。

ちょっと変わった法学演習 行政法演習2とは名ばかりで

はじまりのところはツッコミ待ちかよというくらい私の記憶と違っていたんですが、これ以外の箇所には、そこまで大きな違和感はありません。たとえばこちら。

 しかし、その先生の専門は行政法です。「仮想通貨」を扱う代表的な法律としては資金決済法や、金融商品取引法等が挙げられますが、どちらかというと商法寄りで、必ずしも行政法と結びつきが強いとは言い難い分野です。

はい、その通りです。もっとも、過去の業績を見てもらえばわかりますが、「義務付け訴訟からロボット・AI、そしてシン・ゴジラまで」という、行政法研究者の中でもちょっと変な属性持ちです。そして、それを全部使ってなんとか対応したんですよ。

 なので、「専門的な部分は基本自力救済」「基本的な論文の書き方や作法についてはビシバシ指摘する」「行政法分野から指摘できそうな部分はツッコむ」といった前提で、参加することになりました。

これはゼミ申込み面談の段階で了解してもらいました。この点、千葉大学政経学部における法学演習の立ち位置と、「横田明美准教授」の立ち位置がわからないとわかりにくいですね。他大学の方々にはちょっとびっくりされると思いますので、補足します。

そもそも、このゼミは「行政法演習Ⅱ」という名前ですが、「法学コース」の他の法学演習とは違う特徴を持っています。他のゼミは選抜を行わないか、あるいは行うとしてもゼミの初回に集まった人数で行う場合が多いのですが、このゼミではゼミ開始3ヶ月前・・・つまり、夏休みに入る前に次のような告知を出しています。

akmykt.net

ここから、想定している履修希望者像を引用すると、次の通りです。

2.想定している履修希望者像

A)法政経学部法学コースで法学を専門の一部とする進路を希望する者

法学コース経由で法科大学院に進学したり、公務員等に就職するパターンを想定しています。行政法2の履修を特に強く薦めます。

B)法政経学部(全コース)において卒業論文等を執筆する希望があり、その内容に法学の視点が含まれている者

卒業論文そのものの指導はできません(別途、ゼミナールに所属してください)が、法学に関連する部分の指導を行います。経済や政治・政策学をメインとする学生について、法学全ての領域に関連したサブゼミ的指導を行います。昨年までの卒論指導実績もありますので、民事法や刑事法関連も応相談です。 *選抜を行う場合、Aの学生とBの学生のバランスにも配慮することになります。

まず、コースという言葉についてですが、私が所属する千葉大学政経学部では、2年時進級前に、4つのコースから学生の希望で選択することになっています。そして、法学コースでは演習が半年で、その他のコースでは2年間のゼミナールも開講し、卒論もある(ただし、これら全て任意であり、必修ではない)というカリキュラムになっています。

そして、私にとってもゴミクルさんにとっても幸運だったのは、私自身、担当が「法経学部総合政策学科から法政経学部法学コースに移動」した教員だったということです。

着任した2013年度時点ではまだ学部改組前。法学も経済も政治学・政策学も含めた全ての分野の教員が所属する学科がありました。それが総合政策学科です。こちらは2年間ゼミナール方式を採っていまして、あまりに多様すぎてゼミ選びに悩む位でした。 ちなみに、「卒論書いたことないのに卒論指導をする羽目になった新任教員顛末記」は、ブログに書いた上で拙著『カフェパウゼで法学を』(弘文堂、2018年)の第Ⅳ部として収録しましたので、合わせてご覧ください。

そして、学部改組に伴いゼミの性質が2年間ゼミナール方式から半期演習に変わったあと、つまり、狭義の法学演習を担当することになったときに、どうゼミ運営するか考えました。幸い、千葉大での行政法演習は複数開講されており、他の教員は王道タイプの法学演習を毎年開講しています。ならば、1つくらい、総合政策学科の良さを残したゼミがあってもいいんじゃないか・・・。ということで、法経学部と法政経学部の学生がオーバーラップしていた年において、もともとの卒論指導と新規の法学演習とを組み合わせたスタイルを確立しました。

上記の履修希望者像にも、それが反映されているというわけです。法学学習の単位数が少なくても、法政策に関連する論文を書いてみたい学生が一定数いることはよくわかっていました。そういうニーズをくみ取るために、政治学・政策学コースの学生もとりやすい法学演習にしよう。そういうつもりで、Bの項目は書かれています。

ゼミ面談、教員Sideは大慌て

前置きが長くなりました。本題に戻りましょう。そのように特殊な運営をするゼミですし、そもそも「報告したいこと」を自分で考えることができない方が入ってしまうとミスマッチになりますので、あえて面談を必須としています。そうしたら、例年とは違うタイプの学生が、次次とやってくるではありませんか。今までのパターンだと、公務員志望とか、研究室に居着いてそのままゼミに来るとか、そういうパターンが多いのに、今年は「いきなりやってくる院進学希望」が非常に多い。むむむ、これはどうしたことか。

3人面談したところで気づきました。

「これ、ゴミクル氏の差し金だ」

当時、ゴミクルさん自身はまだ面談に来ていませんでした。しかし、先に申し込んできた学生たちがこのゼミに応募するきっかけになったのが、どうもゴミクルさんとの会話だったようなのです。曰く、「ゼミ論が好きなテーマで書ける法学ゼミがあると聞いて」。ええ、そうです。ゼミ論、どんなテーマでもいいですよ。広い意味で法政策に関わっていればね。そうでないと、政策系の学生が書けないからね。

そういってゼミ志望者たちが持ち込んできたテーマは極めて多岐にわたりました。曰く、「刑事政策の講義を受けて、少年法や更正支援に興味が」・・・でも条例制定過程とかやりたいから裏番組の刑事政策演習じゃなくてこっちにするのね。うんうん。 「ジェンダー論がやりたくて」・・・ええと、ああそうか、公法系科目でテーマ学習できるゼミここしかないものね。ん、なに、修士課程への進学決まってるんですかマジですか。え、もう一人は政策系の大学院進学決めてるんですか。ほう・・・。

つまり、ゴミクルさんの周りには他にも色々なかたちで「やりたいこと」を持っている学生がいて、彼らを引き連れてゴミクルさんがやってきた、というのが第5期横田ゼミの特徴でした。そういう意味で、これを「ゴミクル氏による道場破り」だと受け取っていました。なお、当の本人は迷っていたのでしょうか、ゼミ選抜要件発動の8名申込みギリギリまで正式な連絡がなく、こっちからDMで問い合わせました・・・。

あ、やっぱ「Twitterで面識があり」で合ってましたね。うーん・・・。まあいいか。

SNSと演習室をいったりきたり

道場破りを受けた側は大変です。第1期・第2期生(上記『カフェパウゼで法学を』収録)のテーマに比するくらい、分野外過ぎます。また、ゴミクルさんとあまり面識のなかった他の学生も、大変活発な学生が集まりました。そこで、第5期では、リアルとウェブの全てのリソースを使ってゼミ運営をすることにしました。

「オラに力を分けてくれ・・・」

まず最初にしたことは、Facebookの友人限定投稿にて、「今年のゼミ生テーマがカオスすぎる助けて」というヘルプを出すことでした。 以下引用。

【横田ゼミ第5期】初回は事前提出課題の自己紹介&このゼミでやりたいことを書いた演習申込書に基づく自己紹介&質問大会。そしてスケジュール決めでした。…形式面の指導もしましたよ。 …どうも、法曹特に検察官志望と修士課程進学予定者が多い、これまでにないメンバーということがわかりました。

質疑応答が割と活発なので、その点は指導する必要なさげですが、「研究とは何か」まで指導する必要があり、ひさびさに卒論指導モードを発動しないとダメそうでして、これは大変なことになりました。 しかも関心分野の振れ幅でかいです。 地方創生、性的マイノリティー、フェニミズム、表現の自由、仮想通貨、ナッジ、誘導行政、アーキテクチャ、受刑者の更生、少年法海賊版サイト対策、AIと訴訟手続、諫早湾矛盾判決…うぇええええ。ほんとにこれ1人の教員で教えていいんだろうか。

初回直後のFB投稿。ええと、けっこう悲痛な叫びですねこれ。見かねた友人たちが、色々書きこんでくれました。ええと、今読み返すとここのスレッドだけでイベントが出来るくらいのメンバーじゃないか・・・皆さんありがとうございました。おかげで、研究室内の本が15冊増えました。

ゼミとは「調べ物の必要」を与えるところ

ゼミ初回でテーマを改めて確認し、友人の助けも借りて、次は学生の指導をしていきます。最初は「ちゃんと調べものをしているか」からチェック。このあたり、ゴミクルさんも色々書いていますね。

 ということで、仮想通貨の法的問題が解説された本を探そうとしたのですが、ここでもトラブルが発生。

 千葉大学の図書館に仮想通貨を取り扱った本がほとんどない。

 Amazonで目星をつけていたものが悉く取り扱っていないのです。

 県立図書館、市立図書館に行ってもほとんどない。

 冷静に考えて、千葉での生活で「仮想通貨」なんて単語を聞いたことないし、未だにSuicaすら使えない駅もあるので仕方ないと諦めました。

ここちょっと補足が必要です。

まず、仮想通貨の法的問題については、「書籍」で「仮想通貨」というタイトルで取り扱ったものは、まだあまり多くありません。あるとすれば、実務書としてビジネス法務系の出版社が出しているくらいですね。でも、ちょっとタイトルを変えると、もうちょっとあるはずです。資金決済法とか、消費者法とか、金融法とか、ファイナンス法とか。ただ、これらもそうとう新しくないと仮想通貨まわりのことは載っていませんし、これら自体も実務家向けのものが多いですね。 ゴミクルさんがこのテーマで挑むというのであれば、論文を中心に探すべきでした。特に、「理論も実務もあるんだよ」と言えそうなタイプの雑誌からですね。実際、そのようなタイプの雑誌では仮想通貨関連の論考が投稿されていることは、「行政法研究者」としてというよりは、「情報法研究者」とか、「東大ローの先輩や同期が書いているから」とかという理由で知っていました。

・・・うん、千葉大にもね、NBLも、金融法務事情も、あるんだよ。

今回のエントリで、ゴミクルさんが夏休み頃から調べ始めていたのを初めて知りました。もっと早く相談してくれてもよかったのに。

私が本格的に指導し始めた10月頃に、彼がNBLや金融法務事情を所蔵している7階法学資料室にほとんど足を踏み入れたことがないことを知って、私は軽くショックを受けていました。そう、これって法学系の学生がやりがちなことなんです。君たちの目の前に、小さいけれども広大な世界へのアクセス権があるんだよ。でも、「どういう情報がどのあたりにあるか」を、「自分が使えるリソース」との関係で知らないと、テーマがあっても探せないんだ。

・・・実際、ゴミクルさん以外の学生にも、「それなら経済学資料室にあるし」「こういうキーワードでもう一回調べてみて」というようなかたちで、調べ方自体について指導する場面が多かった気がします。まあ、テーマと手法のどちらかだけでも決まっているだけで上等なので、テーマがある程度明確だった第5期生は、ほとんどこのあたりに指導リソースを集中させたといってよいでしょう(2018年はちょっと尋常じゃないくらい忙しかったのです)。

ただ、国会図書館にたどり着いていることそれ自体はとてもよいことです。友人たちに教えてもらった本の中でも、さすがに1万円超えるような本は、学生指導のためとはいえ自分の研究と直接関係が無いとおいそれと買えないので(例えば『ファイナンス法大全』とか)・・・。そういう本はぜひ最後の砦である国会図書館を頼ると良いでしょう。

このように、「ゼミとは、調べ物の必要を与えるところ」です。そのことはもともと上記『カフェパウゼで法学を』にも書いておいたのですが、改めてそのことを痛感しました。

内容と方法を交換する

ゴミクルさんが連れてきてくれた人たちも、もともと参加するつもりだった人たちも、びっくりするくらい活発。そして、4期生のうち最も広範かつ実際的な調査を元に最新文献を取り扱っていた学生も毎回参加してくれることになったので、今回のゼミ運営では、思い切ったことをしました。 それは、

今まで非公開だった学生報告回のホワイトボードも公開すること

です。これまで、このゼミではゲスト回に限り、ゲストと学生の了解を得て質疑応答記録を板書したものを公開してきました。

例えば、毎年来てくださっている深町晋也先生との記録はこんな感じです。

このようにしておくと、ゼミの内容に興味関心を持っていただけますし、次年度以降のゲストを見つけるのにも一役買っていました。同じものをFacebookにも貼り付けておくことで、友人からのフィードバックも得ています。これらのツイートを、第5期の学生も見ていたのでした。

そして、第5期ゼミ生は、これまで以上に質疑の質も量もすごいので、学生同士のやりとりでも一定水準以上のものが可能だ・・・そう思って学生たちに切り出してみたところ,快諾がえられたというわけです。

学生回は、内容に関する質疑の後に、後ろのホワイトボードの後半(右手側)を使って、「調べ方で苦労したこと」の共有もしています。実は、ゴミクルさんがブログに書いてくれた苦労は、他のゼミ生による報告で得たものも、多数あったわけです。

せっかくなので、ゴミクルさん担当回のツイートも貼り付けておきましょう。

いやはや、審議が進行中の問題について調査して書くのは本当に大変でしたね。お疲れ様でした。

これらの横田ゼミ発ツイートに関心のある方は、横田明美アカウントの方のTwilogで「横田ゼミ」で検索してもらえれば、過去分ツイートも参照できますのでぜひどうぞ。

twilog.org

ゼミ生同士のレビューもすごい

ここまで書いてきて気づいたことがあります。今回「横田さんの指導力がすごい」という大変ありがたいコメントをいただいたのですけれども、自分としては当たり前のことをやって見せてやってもらっただけ、ですね。論文の地の文そのものへの添削などは時間も能力もなくて出来ませんでした。

それでも、ゴミクルさんのレポートが当初の文章からずっと練り上げられているのは、おそらく他のゼミ生の協力のたまものでしょう。成果物になる途中のものをサイボウズライブに投下するように指導していたのですが、それについて教員よりもゼミ生がちゃんとコメントをしていました。うまく相互支援体制、ピアレビューの体制を作れたことが、とても良かったと思います。クローズドSNSをちゃんと活用するというのは他のゼミでもやっていると思うのですが、ピアレビューをするためのハードルを下げたり、ちょっとしたことでもレスを返す文化を上手く構築できれば、これほど「教員が楽できる」システムもないなあと思います。その分の指導リソースは、学生ではできないところに注力できますしね。

補い合える友達は大事

結局、

  • 自分の研究領域を大きく外れるテーマでもなんとか指導できたのは(わたしの)友達のおかげ

  • 短時間であるにも関わらず練り上げることができたのは(ゴミクルさんの)友達のおかげ

と言うことでして、本当に感謝しています。 友達、本当に大事。

元「ブログを書く大学生」として

さて、以上は「ゼミ教員」としてのSide-Bですが、ここからは違います。 「ブロガーから研究者になった私」の部分ですね。これは詳しくは割愛しますが、上記のとおり、私自身が学部4年生からロースクール生の当時、かなりのアクセス数を稼いでいたブログのブログ主でした。

はてなダイアリーが終了してしまったので、跡地だけ残っています。

Kaffeepauseの日記

ブロガー発大学教員が10年前の自分を思い出して悶絶した話

ですので、情報処理でゴミクルさんと対峙したとき、「ああついにこのときが来てしまったか」と思ったんですよね。 自分自身はブログ(はてなダイアリー)やSNS(当時はmixi)をやっていたことで、自分が進むべき道が見つかった、そう思っています。しかし、当時のゴミクルさんは、いわゆる「炎上ツイッタラー」だった。どうしたものか、と思っていたんです。もっとも、SNSは個人の自由ですし、ひとりの公法学者としても、他人の表現の自由にとやかくいうつもりはありません。でもね、ちょっともったいないなあと、思っていたんです。10年前の自分と相談しながら、どうしたら良いかを考えながら、接し方を試行錯誤していました。そして、無事に単位も出せて、本を貸したこともすっかり忘れて、リアルで指導することはもうないかなと思っていました。

ああ、こういうのが読みたかったんです

そんな中接した記事がこちら。

dustcroon.hatenablog.com

この記事を読んだときに、「ああ、ほんとに丁寧に構成された、よく仕込まれたエントリだ」と思ったんです。どうしても、Twitter登場以降のブログ記事は、かつて私たちが書いていた記事とは変わってしまった・・・そんな記事ばかりで閉口していたところに、自分が何度も読み返したい記事が、負の感情的ツイートを批判する形で登場した。そうそう、こういう、魂のこもった長い記事読みたかったし、書きたかったんですよ。

この記事を読んで、私の中でのゴミクルさん像が「困らされた学生」から「隣のブロガー、ときどき学生」に変わりました。ここで印象が変わっていたからこそ、「Twitterで面識のある」先生として登場することに、いささかも戸惑いはなかったのです。よかった。

ブログを書きつづける、ということ

こうやって振り返ってみると、結局はSNSとブログで作った信頼・信用と文章書きスキル」の話なんですよね。SNSでバズるだけでもだめで、ブログでのコンテンツ作成力、そしてリアルでの課題を「面白がれる」能力。そして、これらを一定期間続けること。これらがうまくかみ合うと、人生がとっても面白くなる。 かつて、こんな記事を書き、

www.ashi-tano.jp

『カフェパウゼで法学を』の一年生編にもおさめました。

f:id:Kfpause:20190428141457p:plain
横田明美『カフェパウゼで法学を』18頁 第3章扉絵(イラスト:岡野順)

何事も使い方次第です。

情報処理の演習でどこまで伝わったのかはわかりませんが、結果として、ゴミクルさんがここまで自己実現をしまくっていることに、感嘆すると共に、いろいろやってて良かったなと思いました。

だって、元記事をFacebookでシェアしたら・・・

なんかすごいメンバーで法律事務所見学したあとお祝いすることになったんですよ。

これ、単なる受賞じゃここまでいきません。

「ここまでのブログ記事書ける人どんなヤツ?」と興味を持ってくれたからですよ。

改めておめでとうございます。 語学の単位が揃わなくて卒業できないんじゃないかとか、色々心配もしましたが、記事の最後のオチを提供することになった

『法学学習Q&A』でも、ゴミクルさんは、学生参加がとても重要な「特別ゼミ」を、他のツイッタラーと共に引っ張ってくださいました。いや、著者側もTwitterで集めているし(あとがき参照)、なんなんでしょうね。しかも語学の単位、他の著者にも心配されてましたしね(苦笑)。

とかくSNSの利用は悪いイメージがつきがちですけれども、この記事を面白がっていただける皆さんはきっと、イメージが変わると思います。そうであれば、本当に嬉しいです。 教員冥利につきるというより、ブロガー冥利につきる。そんな出来事でした。 本当に良い記事をありがとうございます。

よし、もう少し私も、再開しよう。

(以上13200文字。一気に書いてしまいました。やっぱブログが好きなんだなあ。)

読者の皆様、最後までお読みいただきありがとうございます。

研究ハックフォーラムのご紹介

研究ハックフォーラムとは

研究ハックフォーラムとは、Facebookで非公開グループ(管理人による参加承認制)として運営しているグループです。 2012年から運営しています。

https://www.facebook.com/groups/480047292035839/

開始時の様子はこちらの記事をご覧ください。
「研究ハックフォーラム」をはじめます - カフェパウゼをあなたと
この記事中にも書いたとおり、このフォーラムは、「研究ハック」、つまり、「研究するときのちょっとした知恵」についての情報交換を目的としています。

参加要件

それゆえ、参加要件はただひとつ。
上記のような「研究ハックの交換をしてみたい」人ならだれでもOKです。
年齢制限もありません。(このあたり、姉妹グループの「若手法学研究者フォーラム」とは大きく異なります。)
そのため、かつての私のような学部生、大学院生、大学在籍の研究者はもちろんのこと、企業にお勤めの方、引退された方、そして「ライフハック」に興味があってそこでの知識は研究にも使えるんじゃないかと思っている方・・・どんな方でもOKです。
最近研究関連の集まりに出て感じたことですが、「知的生産の技術」を知っていても、現在の技術で何ができるかを知らない方はかなりいらっしゃいます。その逆もあります。そこで、相互交換をするために、多様な人材を求めています。

これまでの活動

これまでの活動としては、いろいろな分野の研究に共通する話題である「文献管理」や「時間管理」などについての情報共有をオンラインでおこないつつ、姉妹グループ「若手法学研究者フォーラム」と合同でオフ会である「集い」を開催しています。
「集い」のほうでは、オフラインならではの企画をおこなっています。以下は、これまでの「集い」でおこなわれた企画の一例です。

  • タスク管理アプリやソフトについての意見交換

  • アウトライナー「Workflowy」の使い方について

  • ファイル共有やアウトライナー共有を用いた共同作業についてのレッスン

  • メンタル管理について(実際の悩みを中心にしたオフレコ相談)

直近のイベント

このフォーラムは1年に1.2回のペースで、「集い」と呼ばれるオフラインイベントをおこなっています。 おおむね、7月に1度、姉妹グループ「若手法学研究者フォーラム」との合同での集いを東京でおこなっています。

7月16日午後:第6回の集い

次の「集い」は第6回です。7月16日(月/祝)の14時から、都内会議室でおこないます。 詳しくは若手法学研究者フォーラム・研究ハックフォーラム両方に、イベントページとして立ち上げてご案内しております。
「若手法学」のほうでは研究報告と科研費・学振申請書の書き方相談、「研究ハック」では、『ライフハック大全』『アイデア大全』『問題解決大全』の3大全から研究ハックのおすすめを紹介するLT(ライトニングトーク)大会を予定しています。
どちらのフォーラムのメンバーでも全ての時間にご参加いただけます。

新規入会者募集中です

若手法学研究者フォーラム・研究ハックフォーラムいずれにおいても、随時新規加入を募集しています。相談がある方は、ぜひ管理人・横田明美までお問い合わせください。

若手法学研究者フォーラムのご紹介

若手法学研究者フォーラムとは

若手法学研究者フォーラムとは、Facebookで非公開グループ(管理人による参加承認制)として運営しているグループです。

https://www.facebook.com/groups/126334497538813

こちらは、比較的若手の法学研究を志す方々(研究機関所属の方に限りません)の情報交換を目的として2013年から運営しています。 設立経緯については以下の記事をごらんください。

「若手法学研究者フォーラム」はじめています - カフェパウゼをあなたと

現在、95名のメンバーがいます。 新規入会希望の方もいらっしゃることから、ここで改めて、参加要件と、どんな活動をしているのかをご紹介したいと思います。今月16日に、姉妹グループである研究ハックフォーラムと共催のオフ会イベントもおこないます。研究ハックフォーラムについては別記事をご覧ください。

研究ハックフォーラムのご紹介 - カフェパウゼをあなたと

これまでの活動

入会要件

フォーラム参加当初から、自由闊達な意見交換を目的に、下記の参加要件を設けています。
FBで入会申請をいただいた後、メッセージで参加要件の確認をしております。ご協力ください。(2019/04/11追記)

参加要件:
1.生年月日が、1973年(昭和48年)4月1日以降であること。(2013年4月1日時点で満40才以下)
2.以下のいずれかに該当すること。
(1)法学系の修士課程・博士課程に在籍しているか、在籍したことがある方。
(2)法学系の博士課程進学や助教等への採用を目指して、現在、研究論文を執筆中である方。
(3)法曹資格を有しており、ロースクールでの教育に関心があり、今後研究論文を執筆する予定がある方。
(4)上記の趣旨に鑑みて、準じると管理人が認める方。
*ここでの「研究論文」:制度・事例紹介に留まらない学術的価値を目指している論文。長さは問いません。
3.参加後速やかに、関心分野、学歴、職歴、研究歴等を含んだ自己紹介投稿をすること。

年齢要件を設けているのは、単純に、一定世代以降(司法制度改革前後以降の世代)にしたかったということで、これは何度も議論になりましたが固持しているところです。そのかわり、姉妹グループの研究ハックフォーラムでは参加要件をゆるく設定していますので、オフ会である「集い」に参加したい方は、そちらもご検討ください。

書き込みの留意事項

また、どんどん後から新規の方々がいらっしゃることから、書き込みにあたっての留意事項もおねがいしております。

書き込み時の留意事項:
1.法学研究・法学教育に関する悩みや、研究会案内等、参加要件に掲げた皆さんに聞いてみたいこと、お知らせしたいことを書き込んでください。
2.後から参加するかもしれないメンバーに見られても困らないことだけ書いてください。
3.誠実に、真剣に、しかし肩肘は張りすぎない投稿やコメントをお願いします。

これまでの実績

1. 自己紹介欄によるマッチング

メンバーの属性や専門は様々です。そこで、新入メンバーには自己紹介をお願いしております。この自己紹介投稿のコメント欄では、関連すると思われる既存メンバーからのウェルカムコメントがあったり、必要に応じて管理人である横田明美から、既存メンバーのご紹介をさせていただいております。それらに資するように、やや長めの自己紹介をお願いしています。 すでに他の方々が投稿していますので、それを眺めることによって、どんな人たちがいるのかもわかるようになっています。

2. 意見交換の実績

メンバーからの投稿では、「若手向けのイベント」や、「研究論文をはじめて書くにあたっての悩み相談」、そして「ゼミゲストとしての登壇のお願い」など、様々な情報が書き込まれています。割と込み入った話でも、率直な意見交換ができている印象です。当初の目的だった、「研究科の分断によって小さくなった研究コミュニティの補完」「実務と研究を両方おこなっている方とのマッチング」は、このようなかたちで実現しています。

実際の様子について(寄稿)

抽象的な説明だけではわかりにくいので、ここで、メンバーからの寄稿をいただいているのでご紹介します。

青山学院大学大学院法学研究科博士後期課程の藤間大順さん

1.はじめに
はじめまして。青山学院大学大学院法学研究科博士後期課程の藤間大順と申します。税法を専攻していて,所得課税,特に債務免除益課税の分野を専門としています。事業再生局面で主に問題となる分野です。

2.これまでの関わり方
私は,これまで2回,若手法学研究者フォーラムの集いに参加しています。
2016年の第4回集いにおいては,貸与型奨学金と租税の関わりについて考察したライトニングトークを行いました。このライトニングトークについては,研究会報告等において色々と膨らませたうえで,紀要論文へと繋がりました(拙稿「貸与型奨学金と債務免除益課税」青山ローフォーラム6巻2号(2018年)153頁)。
2017年の第5回集いにおいては,私の研究の概要について報告を行いました。博論の構想,とまで大掛かりなものではありませんでしたが,全体的な研究の展望について報告しました。
一応補足しておくと,集いの参加者は全員報告が求められる,というわけではありません。ただ,(後述するおすすめポイントと関わりますが)有益なコメントがたくさんいただけるので,ぜひ積極的に報告することをお勧めします。

3.おすすめポイント
このフォーラムのおすすめポイントは,まず,敷居が低いことだと思います。私はこのフォーラムにいらっしゃった方々の誰とも知り合いではなかったですが,弘文堂スクエアでの横田先生の連載をきっかけに横田先生にメールをして,快く迎え入れていただきました。敷居が低いのに第一線で活躍されている先生方ばかり,というのは,実は大いなる罠なのではないかとも思いますが,おすすめポイントとして挙げられると思います。
敷居の低さにも関連する点ですが,格式ばらずに報告の機会がもらえる,というのも,とても大きなこのフォーラムのおすすめポイントだと思います。それでいて,第一線の先生方からガチなコメントをいただけます。
また,色々な法分野に関わっている方々とお知り合いになれる点が挙げられます。あくまで私の経験ですが,研究生活をしていると意外と他の法分野の方々と知り合う機会がなくて,人脈がガラパゴス化していきます。そんな中で,様々な法分野の先生方がいらっしゃるこのフォーラムはとても貴重な集まりでした。Facebookグループの投稿もとても充実しています。
更に,このフォーラムに参加することで,その後にも繋がります。私は,このフォーラムに参加したことがきっかけで税法学の若手の先生方とも繋がりができて,色々な研究会へと参加することができました。
最後に,何かこうキラキラした側面ばかり書いてきましたが,最大のこのフォーラムのおすすめポイントは,法学研究の苦しさを良く理解している若手の先生方がいらっしゃる,ということだと思います。普段周りにいる人に研究の苦しさを吐露するのは,案外難しいことです。このフォーラムでは,そういう苦しみみたいなものも共有してくださって,私はとても救われています。

早稲田大学社会科学研究科博士後期課程 吉田朗さん

1.はじめに【自己紹介もかねて】
 現在、早大社会科学研究科博士後期課程所属(4月から5年生です)、専門分野は環境法+保険法、研究領域は、環境問題における費用負担の在り方(費用負担の手法として保険使おうぜ!ということです)です。環境法と保険法のコラボを考えている人間です。

2.関わり方に関して
 環境法政策学会で横田先生に初めてお会いして、(カジュアルに)「入らないかい?」の一言で入りました。これまで、フォーラムで3回研究報告を行い、そのうち2回を論文として世に出しました。(参考:拙著(2015)「氾濫原管理における水害保険ー全米洪水保険制度を素材としてー」社学研論集25、62-72頁/ 拙著(2016)「地震保険による耐震アップグレードーカルフォルニア地震保険を素材として」社学研論集27、13-23頁)。また、D論構想も報告をしました。

3.フォーラムの特典(こんなことが実現できますよ)
・メンバーは、最近D論を出したり、院生であったりするので、今、抱えている課題を話し、糸口が見える。(上の世代の場合、悪気はないが、時代錯誤になっているケースもある。一般例として、親が子供に自分時代の就職活動の方法をアドバイスしてしまい、子供が結果迷惑するアレ)
・純粋培養の院生(学部からそのまま大学院に来て今日至る)やそこから先生になった方々がメンバーなので、同じ世代での繋がりができる。
・法学分野も多種多様なので、いかに自分の研究を理解してもらえるのかの訓練になる。
・忖度一切必要なし(思ったことを述べるが原則なので、自由に表現が出来る場ですよ。)
・実務系のメンバーの意見が聞ける(個人の意見だが、学術だけに陥ると、社会と研究との関わりが見出せなくなり、どんなに素晴らしい議論であったとしても、机上の空論と一蹴される危険もあるので)
・最近は「夏の例大祭」と名づけ、夏ごろにフォーラムやってます。
・なにせ、グループ管理人の横田先生の人脈が尋常ではない(個人の感想の領域です)ので、初めての学会で、横田先生の知り合いがいて、そこを糸口に新しい人脈を構築できる。

いかがでしょうか。その他にも、このフォーラムをきっかけに研究論文を投稿したり、学会報告をしているメンバーはたくさんいます。

直近のイベント

お二人のコメントにもあるとおり、このフォーラムは1年に1.2回のペースで、「集い」と呼ばれるオフラインイベントをおこなっています。 おおむね、7月に1度、姉妹グループ「研究ハックフォーラム」との合同での集いを東京でおこなっているのですが、今年は、それに加えて博多での会合もおこないます。以下ご紹介します。

7月16日午後:第6回の集い

こちらは、7月16日(月/祝)の14時から、都内会議室でおこないます。 詳しくは若手法学研究者フォーラム・研究ハックフォーラム両方に、イベントページとして立ち上げてご案内しております。
「若手法学」のほうでは研究報告と科研費・学振申請書の書き方相談、「研究ハック」では、『ライフハック大全』『アイデア大全』『問題解決大全』の3大全から研究ハックのおすすめを紹介するLT(ライトニングトーク)大会を予定しています。
どちらのフォーラムのメンバーでも全ての時間にご参加いただけます。

7月27日夜:博多での研究報告イベント

こちらは、九州大学を会場にして、あるメンバーの研究構想について、関連するメンバー中心に話しあいます。こちらは若手法学研究者フォーラムでのみ詳細を共有します。

新規入会者募集中です

若手法学研究者フォーラム・研究ハックフォーラムいずれにおいても、随時新規加入を募集しています。相談がある方は、ぜひ管理人・横田明美までお問い合わせください。