カフェパウゼをあなたと

コーヒー片手に語らいを!わたしと、みんなと、そしてあなた自身の過去・未来と。

ブロガーから研究者になった私のゼミにαツイッタラーが道場破りにきた話

教員側からのSide-B

こちらのエントリは、ゼミ生が懸賞論文で入賞したことをお祝いするために担当教員が書いた、アンサーエントリ(アンサーソング的な記事)です。

え、記事タイトルと印象が違うって?いや、合ってますよ。 まずは当該ゼミ生が書いた記事を読んでください。 dustcroon.hatenablog.com

当該ゼミ生は、あのゴミクルーン氏(以下、ゴミクルさん)です。フォロワー63000越え(2019/04/27時点)のいわゆるαツイッタラーです。こっちもそれなりにフォロワー多いはず(4600超)なんですが、単純計算で14倍以上差があります。もちろん入学当時から千葉大学教員の間でも彼の存在は認知されており、在学4年間、話題に事欠くことがない学生でした。

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歴代のゼミ論集。卒論からレポートになったはずなのに結構分厚い!

そんな彼が、上記の通り私のゼミで書いたゼミ論文を投稿して受賞するという大変おめでたい話で、教員冥利につきるわけ・・・ですが、教育実践だからといってこの話を研究者としての公式ブログ(横田明美研究室)に書くのはなんか違うなあと思いまして、こっちのブログに書くことにしました。 なぜなら、この話は「ブロガーから研究者になった私のところに、(学部生時代の自分の危なっかしさを思い起こさせるような)αツイッタラー(炎上気質)がやってきた話」だからです。

・・・長いよ。記事も長いです。 以下、教員倫理を踏み外さないようにしつつ、主としてブロガー人格でお話します。アンサーエントリなので、上記記事からの引用に応答する形式です(以下、明示のない引用は全て上記記事からの引用です)。この記事は、教員サイドからみたいわばSide-B(ぱうぜ教員からみた顛末記)なわけでして、学生からみた視点と、教員側視点を両方合わせてみると、「大学における学びとは何か」「法学系学部における論文指導とは」など、ちょっとしたFD(ファカルティ・ディベロップメント)資料になることも狙って書いてみます。

まあ、本音を言えば「久々に時間をとって長文エントリを書くネタが向こうの方から突撃してきた(しめしめ)」という、ブログ書き垂涎状況を逃してなるものか、ということです。普通の大学教員を期待して読み始めた皆さんごめんね。ここのブログ主はそういうヤツです。あと、今回は特にゴミクルさんブログ読み慣れている人向けに書いてますので表現中のネタ度5割増しです。

ゴミクルーンの道場破り

まずは、元記事よろしく時系列にそって振り返ってみることにしましょう・・・って、これ、最初のところ、あたしが記憶しているのと違うぞ。

情報処理という科目が、あったような

まず、問題の箇所はここですね。

千葉大学政経学部法学コースには、1〜2年間所属して卒業論文を書くようなゼミがありません。半期単位で履修できる法学演習という科目群がその役割を担うことになります。それもあってか、卒業論文を課する法学演習がありません。

 ですが、1つだけ、過去に卒業論文の作成・指導を行っていた演習が開講されていたので、そちらの先生の元に伺いました。

 もともとその先生とはTwitter上で面識がある方だったので、話はとてもスムーズに進みました。やっててよかったTwitter

ええと、ちょっとまってねゴミクルさん、確かにTwitter上での面識はありましたけど・・・あったけど・・・

その前に情報リテラシー科目「情報処理」でお会いしてますよね(にっこり)。

というかですね、私が担当する情報処理に、過年度生がひとり入っていて、それがたまたまゴミクル氏の中の人だったわけです。ええと、一年時ではなくて、過年度、つまり2年次の再割り当てのときですね。ハッキリ言って奇跡的です。というのも、毎年担当する教員が固定されているタイプの科目ではなく、一年生向け科目の割り当て分担上誰が担当するか決めるのです。そして、今ではこの科目を担当するのは3回目(後に情報リテラシーという名前に変わっており、2019年度も担当しています)ですが、よりによってはじめて担当する年度にαツイッタラー引き当ててしまったのです。これ、自らTwitter廃人でない限り、教員としてはパニックになるところです。 しかも当時のゴミクルさん、全力でぶっ込むタイプのα、でして・・・ええと、皆までは言いません。

その当時のことを今思い返してみますと、リアルでお会いするまでは、ゴミクルさんとのオンラインでの距離は意識的に取っていたのでした。一応、入学当時から話題となっていたアカウントでしたが、長年ブログ・Twitterのオンラインに常駐している者として「教員がからむとややこしくなる」というのは学生目線でよくわかっていました。 ええ、学部4年生~ロー卒業直前まで書いてたブログを、東大法学部教員と行政法学界のけっこうな人数がリアルタイムヲチしてましたからね? ということで、教員アカウント(@akmykt)でもブロガーアカウント(@kfpause)でもフォローせずに生暖かく見守っていたわけですが、なんと先方からぶっ込まれるとは思わず・・・ええと、情報処理教員として必要なことはしました。オフライン・オンラインの使い分けが大変でしたが・・・たしか、その過程で色々な本を貸した記憶があります。思えば、その頃からゼミ指導は始まっていたのかもしれません。

ちょっと変わった法学演習 行政法演習2とは名ばかりで

はじまりのところはツッコミ待ちかよというくらい私の記憶と違っていたんですが、これ以外の箇所には、そこまで大きな違和感はありません。たとえばこちら。

 しかし、その先生の専門は行政法です。「仮想通貨」を扱う代表的な法律としては資金決済法や、金融商品取引法等が挙げられますが、どちらかというと商法寄りで、必ずしも行政法と結びつきが強いとは言い難い分野です。

はい、その通りです。もっとも、過去の業績を見てもらえばわかりますが、「義務付け訴訟からロボット・AI、そしてシン・ゴジラまで」という、行政法研究者の中でもちょっと変な属性持ちです。そして、それを全部使ってなんとか対応したんですよ。

 なので、「専門的な部分は基本自力救済」「基本的な論文の書き方や作法についてはビシバシ指摘する」「行政法分野から指摘できそうな部分はツッコむ」といった前提で、参加することになりました。

これはゼミ申込み面談の段階で了解してもらいました。この点、千葉大学政経学部における法学演習の立ち位置と、「横田明美准教授」の立ち位置がわからないとわかりにくいですね。他大学の方々にはちょっとびっくりされると思いますので、補足します。

そもそも、このゼミは「行政法演習Ⅱ」という名前ですが、「法学コース」の他の法学演習とは違う特徴を持っています。他のゼミは選抜を行わないか、あるいは行うとしてもゼミの初回に集まった人数で行う場合が多いのですが、このゼミではゼミ開始3ヶ月前・・・つまり、夏休みに入る前に次のような告知を出しています。

akmykt.net

ここから、想定している履修希望者像を引用すると、次の通りです。

2.想定している履修希望者像

A)法政経学部法学コースで法学を専門の一部とする進路を希望する者

法学コース経由で法科大学院に進学したり、公務員等に就職するパターンを想定しています。行政法2の履修を特に強く薦めます。

B)法政経学部(全コース)において卒業論文等を執筆する希望があり、その内容に法学の視点が含まれている者

卒業論文そのものの指導はできません(別途、ゼミナールに所属してください)が、法学に関連する部分の指導を行います。経済や政治・政策学をメインとする学生について、法学全ての領域に関連したサブゼミ的指導を行います。昨年までの卒論指導実績もありますので、民事法や刑事法関連も応相談です。 *選抜を行う場合、Aの学生とBの学生のバランスにも配慮することになります。

まず、コースという言葉についてですが、私が所属する千葉大学政経学部では、2年時進級前に、4つのコースから学生の希望で選択することになっています。そして、法学コースでは演習が半年で、その他のコースでは2年間のゼミナールも開講し、卒論もある(ただし、これら全て任意であり、必修ではない)というカリキュラムになっています。

そして、私にとってもゴミクルさんにとっても幸運だったのは、私自身、担当が「法経学部総合政策学科から法政経学部法学コースに移動」した教員だったということです。

着任した2013年度時点ではまだ学部改組前。法学も経済も政治学・政策学も含めた全ての分野の教員が所属する学科がありました。それが総合政策学科です。こちらは2年間ゼミナール方式を採っていまして、あまりに多様すぎてゼミ選びに悩む位でした。 ちなみに、「卒論書いたことないのに卒論指導をする羽目になった新任教員顛末記」は、ブログに書いた上で拙著『カフェパウゼで法学を』(弘文堂、2018年)の第Ⅳ部として収録しましたので、合わせてご覧ください。

そして、学部改組に伴いゼミの性質が2年間ゼミナール方式から半期演習に変わったあと、つまり、狭義の法学演習を担当することになったときに、どうゼミ運営するか考えました。幸い、千葉大での行政法演習は複数開講されており、他の教員は王道タイプの法学演習を毎年開講しています。ならば、1つくらい、総合政策学科の良さを残したゼミがあってもいいんじゃないか・・・。ということで、法経学部と法政経学部の学生がオーバーラップしていた年において、もともとの卒論指導と新規の法学演習とを組み合わせたスタイルを確立しました。

上記の履修希望者像にも、それが反映されているというわけです。法学学習の単位数が少なくても、法政策に関連する論文を書いてみたい学生が一定数いることはよくわかっていました。そういうニーズをくみ取るために、政治学・政策学コースの学生もとりやすい法学演習にしよう。そういうつもりで、Bの項目は書かれています。

ゼミ面談、教員Sideは大慌て

前置きが長くなりました。本題に戻りましょう。そのように特殊な運営をするゼミですし、そもそも「報告したいこと」を自分で考えることができない方が入ってしまうとミスマッチになりますので、あえて面談を必須としています。そうしたら、例年とは違うタイプの学生が、次次とやってくるではありませんか。今までのパターンだと、公務員志望とか、研究室に居着いてそのままゼミに来るとか、そういうパターンが多いのに、今年は「いきなりやってくる院進学希望」が非常に多い。むむむ、これはどうしたことか。

3人面談したところで気づきました。

「これ、ゴミクル氏の差し金だ」

当時、ゴミクルさん自身はまだ面談に来ていませんでした。しかし、先に申し込んできた学生たちがこのゼミに応募するきっかけになったのが、どうもゴミクルさんとの会話だったようなのです。曰く、「ゼミ論が好きなテーマで書ける法学ゼミがあると聞いて」。ええ、そうです。ゼミ論、どんなテーマでもいいですよ。広い意味で法政策に関わっていればね。そうでないと、政策系の学生が書けないからね。

そういってゼミ志望者たちが持ち込んできたテーマは極めて多岐にわたりました。曰く、「刑事政策の講義を受けて、少年法や更正支援に興味が」・・・でも条例制定過程とかやりたいから裏番組の刑事政策演習じゃなくてこっちにするのね。うんうん。 「ジェンダー論がやりたくて」・・・ええと、ああそうか、公法系科目でテーマ学習できるゼミここしかないものね。ん、なに、修士課程への進学決まってるんですかマジですか。え、もう一人は政策系の大学院進学決めてるんですか。ほう・・・。

つまり、ゴミクルさんの周りには他にも色々なかたちで「やりたいこと」を持っている学生がいて、彼らを引き連れてゴミクルさんがやってきた、というのが第5期横田ゼミの特徴でした。そういう意味で、これを「ゴミクル氏による道場破り」だと受け取っていました。なお、当の本人は迷っていたのでしょうか、ゼミ選抜要件発動の8名申込みギリギリまで正式な連絡がなく、こっちからDMで問い合わせました・・・。

あ、やっぱ「Twitterで面識があり」で合ってましたね。うーん・・・。まあいいか。

SNSと演習室をいったりきたり

道場破りを受けた側は大変です。第1期・第2期生(上記『カフェパウゼで法学を』収録)のテーマに比するくらい、分野外過ぎます。また、ゴミクルさんとあまり面識のなかった他の学生も、大変活発な学生が集まりました。そこで、第5期では、リアルとウェブの全てのリソースを使ってゼミ運営をすることにしました。

「オラに力を分けてくれ・・・」

まず最初にしたことは、Facebookの友人限定投稿にて、「今年のゼミ生テーマがカオスすぎる助けて」というヘルプを出すことでした。 以下引用。

【横田ゼミ第5期】初回は事前提出課題の自己紹介&このゼミでやりたいことを書いた演習申込書に基づく自己紹介&質問大会。そしてスケジュール決めでした。…形式面の指導もしましたよ。 …どうも、法曹特に検察官志望と修士課程進学予定者が多い、これまでにないメンバーということがわかりました。

質疑応答が割と活発なので、その点は指導する必要なさげですが、「研究とは何か」まで指導する必要があり、ひさびさに卒論指導モードを発動しないとダメそうでして、これは大変なことになりました。 しかも関心分野の振れ幅でかいです。 地方創生、性的マイノリティー、フェニミズム、表現の自由、仮想通貨、ナッジ、誘導行政、アーキテクチャ、受刑者の更生、少年法海賊版サイト対策、AIと訴訟手続、諫早湾矛盾判決…うぇええええ。ほんとにこれ1人の教員で教えていいんだろうか。

初回直後のFB投稿。ええと、けっこう悲痛な叫びですねこれ。見かねた友人たちが、色々書きこんでくれました。ええと、今読み返すとここのスレッドだけでイベントが出来るくらいのメンバーじゃないか・・・皆さんありがとうございました。おかげで、研究室内の本が15冊増えました。

ゼミとは「調べ物の必要」を与えるところ

ゼミ初回でテーマを改めて確認し、友人の助けも借りて、次は学生の指導をしていきます。最初は「ちゃんと調べものをしているか」からチェック。このあたり、ゴミクルさんも色々書いていますね。

 ということで、仮想通貨の法的問題が解説された本を探そうとしたのですが、ここでもトラブルが発生。

 千葉大学の図書館に仮想通貨を取り扱った本がほとんどない。

 Amazonで目星をつけていたものが悉く取り扱っていないのです。

 県立図書館、市立図書館に行ってもほとんどない。

 冷静に考えて、千葉での生活で「仮想通貨」なんて単語を聞いたことないし、未だにSuicaすら使えない駅もあるので仕方ないと諦めました。

ここちょっと補足が必要です。

まず、仮想通貨の法的問題については、「書籍」で「仮想通貨」というタイトルで取り扱ったものは、まだあまり多くありません。あるとすれば、実務書としてビジネス法務系の出版社が出しているくらいですね。でも、ちょっとタイトルを変えると、もうちょっとあるはずです。資金決済法とか、消費者法とか、金融法とか、ファイナンス法とか。ただ、これらもそうとう新しくないと仮想通貨まわりのことは載っていませんし、これら自体も実務家向けのものが多いですね。 ゴミクルさんがこのテーマで挑むというのであれば、論文を中心に探すべきでした。特に、「理論も実務もあるんだよ」と言えそうなタイプの雑誌からですね。実際、そのようなタイプの雑誌では仮想通貨関連の論考が投稿されていることは、「行政法研究者」としてというよりは、「情報法研究者」とか、「東大ローの先輩や同期が書いているから」とかという理由で知っていました。

・・・うん、千葉大にもね、NBLも、金融法務事情も、あるんだよ。

今回のエントリで、ゴミクルさんが夏休み頃から調べ始めていたのを初めて知りました。もっと早く相談してくれてもよかったのに。

私が本格的に指導し始めた10月頃に、彼がNBLや金融法務事情を所蔵している7階法学資料室にほとんど足を踏み入れたことがないことを知って、私は軽くショックを受けていました。そう、これって法学系の学生がやりがちなことなんです。君たちの目の前に、小さいけれども広大な世界へのアクセス権があるんだよ。でも、「どういう情報がどのあたりにあるか」を、「自分が使えるリソース」との関係で知らないと、テーマがあっても探せないんだ。

・・・実際、ゴミクルさん以外の学生にも、「それなら経済学資料室にあるし」「こういうキーワードでもう一回調べてみて」というようなかたちで、調べ方自体について指導する場面が多かった気がします。まあ、テーマと手法のどちらかだけでも決まっているだけで上等なので、テーマがある程度明確だった第5期生は、ほとんどこのあたりに指導リソースを集中させたといってよいでしょう(2018年はちょっと尋常じゃないくらい忙しかったのです)。

ただ、国会図書館にたどり着いていることそれ自体はとてもよいことです。友人たちに教えてもらった本の中でも、さすがに1万円超えるような本は、学生指導のためとはいえ自分の研究と直接関係が無いとおいそれと買えないので(例えば『ファイナンス法大全』とか)・・・。そういう本はぜひ最後の砦である国会図書館を頼ると良いでしょう。

このように、「ゼミとは、調べ物の必要を与えるところ」です。そのことはもともと上記『カフェパウゼで法学を』にも書いておいたのですが、改めてそのことを痛感しました。

内容と方法を交換する

ゴミクルさんが連れてきてくれた人たちも、もともと参加するつもりだった人たちも、びっくりするくらい活発。そして、4期生のうち最も広範かつ実際的な調査を元に最新文献を取り扱っていた学生も毎回参加してくれることになったので、今回のゼミ運営では、思い切ったことをしました。 それは、

今まで非公開だった学生報告回のホワイトボードも公開すること

です。これまで、このゼミではゲスト回に限り、ゲストと学生の了解を得て質疑応答記録を板書したものを公開してきました。

例えば、毎年来てくださっている深町晋也先生との記録はこんな感じです。

このようにしておくと、ゼミの内容に興味関心を持っていただけますし、次年度以降のゲストを見つけるのにも一役買っていました。同じものをFacebookにも貼り付けておくことで、友人からのフィードバックも得ています。これらのツイートを、第5期の学生も見ていたのでした。

そして、第5期ゼミ生は、これまで以上に質疑の質も量もすごいので、学生同士のやりとりでも一定水準以上のものが可能だ・・・そう思って学生たちに切り出してみたところ,快諾がえられたというわけです。

学生回は、内容に関する質疑の後に、後ろのホワイトボードの後半(右手側)を使って、「調べ方で苦労したこと」の共有もしています。実は、ゴミクルさんがブログに書いてくれた苦労は、他のゼミ生による報告で得たものも、多数あったわけです。

せっかくなので、ゴミクルさん担当回のツイートも貼り付けておきましょう。

いやはや、審議が進行中の問題について調査して書くのは本当に大変でしたね。お疲れ様でした。

これらの横田ゼミ発ツイートに関心のある方は、横田明美アカウントの方のTwilogで「横田ゼミ」で検索してもらえれば、過去分ツイートも参照できますのでぜひどうぞ。

twilog.org

ゼミ生同士のレビューもすごい

ここまで書いてきて気づいたことがあります。今回「横田さんの指導力がすごい」という大変ありがたいコメントをいただいたのですけれども、自分としては当たり前のことをやって見せてやってもらっただけ、ですね。論文の地の文そのものへの添削などは時間も能力もなくて出来ませんでした。

それでも、ゴミクルさんのレポートが当初の文章からずっと練り上げられているのは、おそらく他のゼミ生の協力のたまものでしょう。成果物になる途中のものをサイボウズライブに投下するように指導していたのですが、それについて教員よりもゼミ生がちゃんとコメントをしていました。うまく相互支援体制、ピアレビューの体制を作れたことが、とても良かったと思います。クローズドSNSをちゃんと活用するというのは他のゼミでもやっていると思うのですが、ピアレビューをするためのハードルを下げたり、ちょっとしたことでもレスを返す文化を上手く構築できれば、これほど「教員が楽できる」システムもないなあと思います。その分の指導リソースは、学生ではできないところに注力できますしね。

補い合える友達は大事

結局、

  • 自分の研究領域を大きく外れるテーマでもなんとか指導できたのは(わたしの)友達のおかげ

  • 短時間であるにも関わらず練り上げることができたのは(ゴミクルさんの)友達のおかげ

と言うことでして、本当に感謝しています。 友達、本当に大事。

元「ブログを書く大学生」として

さて、以上は「ゼミ教員」としてのSide-Bですが、ここからは違います。 「ブロガーから研究者になった私」の部分ですね。これは詳しくは割愛しますが、上記のとおり、私自身が学部4年生からロースクール生の当時、かなりのアクセス数を稼いでいたブログのブログ主でした。

はてなダイアリーが終了してしまったので、跡地だけ残っています。

Kaffeepauseの日記

ブロガー発大学教員が10年前の自分を思い出して悶絶した話

ですので、情報処理でゴミクルさんと対峙したとき、「ああついにこのときが来てしまったか」と思ったんですよね。 自分自身はブログ(はてなダイアリー)やSNS(当時はmixi)をやっていたことで、自分が進むべき道が見つかった、そう思っています。しかし、当時のゴミクルさんは、いわゆる「炎上ツイッタラー」だった。どうしたものか、と思っていたんです。もっとも、SNSは個人の自由ですし、ひとりの公法学者としても、他人の表現の自由にとやかくいうつもりはありません。でもね、ちょっともったいないなあと、思っていたんです。10年前の自分と相談しながら、どうしたら良いかを考えながら、接し方を試行錯誤していました。そして、無事に単位も出せて、本を貸したこともすっかり忘れて、リアルで指導することはもうないかなと思っていました。

ああ、こういうのが読みたかったんです

そんな中接した記事がこちら。

dustcroon.hatenablog.com

この記事を読んだときに、「ああ、ほんとに丁寧に構成された、よく仕込まれたエントリだ」と思ったんです。どうしても、Twitter登場以降のブログ記事は、かつて私たちが書いていた記事とは変わってしまった・・・そんな記事ばかりで閉口していたところに、自分が何度も読み返したい記事が、負の感情的ツイートを批判する形で登場した。そうそう、こういう、魂のこもった長い記事読みたかったし、書きたかったんですよ。

この記事を読んで、私の中でのゴミクルさん像が「困らされた学生」から「隣のブロガー、ときどき学生」に変わりました。ここで印象が変わっていたからこそ、「Twitterで面識のある」先生として登場することに、いささかも戸惑いはなかったのです。よかった。

ブログを書きつづける、ということ

こうやって振り返ってみると、結局はSNSとブログで作った信頼・信用と文章書きスキル」の話なんですよね。SNSでバズるだけでもだめで、ブログでのコンテンツ作成力、そしてリアルでの課題を「面白がれる」能力。そして、これらを一定期間続けること。これらがうまくかみ合うと、人生がとっても面白くなる。 かつて、こんな記事を書き、

www.ashi-tano.jp

『カフェパウゼで法学を』の一年生編にもおさめました。

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横田明美『カフェパウゼで法学を』18頁 第3章扉絵(イラスト:岡野順)

何事も使い方次第です。

情報処理の演習でどこまで伝わったのかはわかりませんが、結果として、ゴミクルさんがここまで自己実現をしまくっていることに、感嘆すると共に、いろいろやってて良かったなと思いました。

だって、元記事をFacebookでシェアしたら・・・

なんかすごいメンバーで法律事務所見学したあとお祝いすることになったんですよ。

これ、単なる受賞じゃここまでいきません。

「ここまでのブログ記事書ける人どんなヤツ?」と興味を持ってくれたからですよ。

改めておめでとうございます。 語学の単位が揃わなくて卒業できないんじゃないかとか、色々心配もしましたが、記事の最後のオチを提供することになった

『法学学習Q&A』でも、ゴミクルさんは、学生参加がとても重要な「特別ゼミ」を、他のツイッタラーと共に引っ張ってくださいました。いや、著者側もTwitterで集めているし(あとがき参照)、なんなんでしょうね。しかも語学の単位、他の著者にも心配されてましたしね(苦笑)。

とかくSNSの利用は悪いイメージがつきがちですけれども、この記事を面白がっていただける皆さんはきっと、イメージが変わると思います。そうであれば、本当に嬉しいです。 教員冥利につきるというより、ブロガー冥利につきる。そんな出来事でした。 本当に良い記事をありがとうございます。

よし、もう少し私も、再開しよう。

(以上13200文字。一気に書いてしまいました。やっぱブログが好きなんだなあ。)

読者の皆様、最後までお読みいただきありがとうございます。