カフェパウゼをあなたと

コーヒー片手に語らいを!わたしと、みんなと、そしてあなた自身の過去・未来と。

「なぜブログをやっているの?」と問われて改めて考えた3つのこと

「忙しそうなのになぜブログをやっているのですか」

「研究ハックフォーラム」と「研妻あるある」がらみでより親しくなったご夫婦からお会いしたい旨のお申し出をいただき、一通りご相談に乗った後に、旦那様(研究者)から聞かれました。

「ぱうぜさんはますますお忙しそうです。今なぜ、ブログを続けているのですか。続けるコツとかありますか」と。

このブログをやっている理由は過去のエントリでも書きました。
なぜ始めるのか? - カフェパウゼをあなたと
この記事をかいていたときはまだ博士論文を執筆している最中でしたので、余計に「ブログをしていることの言い訳」が必要でした。
(今だって、「直近一週間以内に〆切があるときはブログは控える」ようにしていますけれども。)
このエントリーで述べたことと多少重複しますが、上記の会合で述べた三つのポイントをこのブログにも書いておこうと思います。

その1:ブログはセーブポイントでありデータベース

まずは、上記エントリーでも書いていたとおりの理由です。

セーブポイントとしてのブログ

あのときは、「初心者の今」を記録しておく、ということを書きました。どうしても自分の考えは変化していくので、その時々に気づいたことを、その時々の感情と共に記録していくのであれば「今」しかない。上級者になってからでは見えないこともたくさん気がついているはずで、それを記録しておくべきであろう、ということでした。

質問データベース

また、自分の中でのブログポリシーとして、「同じ事を3回聞かれたり説明したりしたら記事にしよう」ということがあります。まったく同じ内容のことを3回話すというのは、その話に需要があるということですし、自分の中でも表現がこなれてきます。そうなったら、4回目以降は「とりあえずこの記事読んで、それでも分からないなら相談して」と言った方が、自分も相手も時間の節約になるはずです。なによりブログに置いておけば全世界どこからでもアクセスできますから、自分でも「前はどうしたっけ」と考えたとき、どこからでも見ることができて便利です。

その2:ネタ探し脳を持つ

ここからは一般的に言われていることも含めて改めて書いてみましょう。

アウトプット先があるということの幸福

常に何かを考えながら暮らしていると、色々なことに気がつきます。今はちょっとした感想や感慨を示すのに便利なTwitterなどがありますから、メモ的に「つぶやく」こともできます。しかし、やはりまとまった気持ちを残しておくためにはある程度の長さが必要になりますし、エビデンスを示しつつ書くためにはTwitterは不向きです(一部だけ切り離されて拡散してしまうことを禁止できない仕組み)。そうしたとき、まとまった文章を、自分以外の人の手を借りず、しかし自分以外の人にも読んでもらうスタイルでかき付けることができるこの場は便利です。

ブログに書いてしまえば「無駄」なことではなくなる

今日みたいな台風の日、予定がキャンセルになって、家でごろごろ・・・そんなときに降りてくる気持ちを書き付ける場所がなければ、今日一日なにも起きなかった(それはそれで幸せなことですが)ことになってしまう。そうならないように今パソコンを開いているのかも知れません。ただ思索しているだけでなく、書き付ける場所を持つことで、どうにか生産的な頭でいられるような気がします。

その3:「文章書き」を好きで居続けるために

その2の後半からなし崩し的に入っていますが、最後は「文章書きを好きで居続けるために」ブログを書いている、という側面についてです。

「モードの違う書き手」を自分の中に複数用意しておく意味

つい先日、7月に行った某講演について、後日談や補足に当たる記事を書いて欲しいという追加の依頼がありました。もちろん、論文でもいいとのことでしたが、共著者との関係から、堅苦しくない文章で、しかしややもすると間違ったメッセ―ジになりかねない部分についての補足をしようと試みました。
しかし、どういうスタイルで書くべきか、悩みました。・・・そうだ、このブログのスタイルで書いてしまえ。
そう思ってからは早かったです。要するに、伝えたいことを決めておいて、それに当たるような体験談を付け加えていくというスタイルです。厳密なエビデンスは求められない代わりに、読みやすさと親しみやすさが求められるという、この依頼にはピッタリでした。
(このお仕事は本名で受けていますので、公刊され次第そちらのペルソナのサイトでリンクを張ります)
このようなスタイルの依頼はかつてもありました・・・前職のメルマガで担当していたコラムがそうです。内容は割とマジメだけれども、論文ほどの厳密な脚註は必要ではない代わりに、広い読み手を想定するというような。こう言う文章の書き方の訓練に、ブログはピッタリです。

すぐに反応が返ってくる所も魅力

また、ブログの場合は、各種SNSとの連携をうまく使えば、すぐにレスポンスが返ってきます。論文だと査読がなかったとしても掲載までにはかなり時間がかかりますから、そうはいかないですね。レスポンスを得るまで時間が掛かるコンテンツを作りつつも、その合間に反応がわかるコンテンツを投下することで、文章を書くためのモチベーションを保っているという面があります。

つべこべ言わずにはじめてみては

こういう質問を受けた理由は、「やってみたいんだけどどうしていいかわからない」ということでした。いや、つべこべ言わずに始めてみては。どうしても、その人それぞれのやり方になるし、それで良いんですから。

研究会の打ち上げの後に、研究の話とブログの話を両方織り交ぜたカフェパウゼができて、とても幸せでした。これからもぜひ。

「文章をはき出すとき」と「推敲・編集するとき」を分けてみよう

同じことを4回聞かれたから書きますよ

もうすぐ10月・・・12月提出の修士論文や博士論文を抱えている人からすると、9月中にどこまで出来るかが一つのポイントになります。立て続けに3人くらいの方から、「どうしても進まない日が何日も続くんです、どうすればいいでしょう」というご相談を受けました。
とりあえず、最悪の事態を避けるために、「発声練習」さんの以下のエントリ及びそこの関連リンクを見ることを薦めました。
卒業研究・修士研究時の悪循環を防ごう - 発声練習
そして、どういう風に進めているのか、どういう段階なのかを聞いた上で、自分が博士論文を執筆するときに一番気をつけていたことを話したので、ここでも紹介してみたいと思います。

一番大事な気づき:「思いつく人」と「直す人」は違う人

長文になることがわかりきっている文章を書くときに、いつも見落としてしまうことがあります。それは、あまりに長い文章だと脳内メモリだけでは整序立った文章にすることは難しい、ということです。
ひらめいて、思いついて、話し始めるときのわくわくした人と、しっかりして、落ち着いて、直し始めるときの少し醒めている人を同時に動かすことは難しいのです。
これが、1000字、あるいはせいぜい5000字くらいの長さのブログ1エントリー分であれば、書いたり戻ったりしながらでもなんとか書けます。文章を紡ぎながら編集も一緒にやってしまうというスタイルですね。
しかし、5000字の原稿を10枚、20枚と組み合わせていかなければ書けないような長さになると、どうしても編集担当要員が必要になります。相互の文章の並び順とか、適切な脚註の配置などは、ひらめいているときのわくわく感を持ち続けているとミスしやすいんですよ。

意図的に作業を分けよう

そうであるならば、意図的に作業をわける事が必要になります。自分が博論を書いたときに、指導教員と相談しながらやったやり方は以下の通りです。

第一フェイズ:ひらめきを生かしながら、「もやもや」をとにかく紙に落とし込む

まずは、今考えていることをとにかく紙に書き出します。
あなたが論文を書いている途中の院生であれば、「この話題とこの資料は関連しているな」というような塊がいくつもあるはずです。あるいは、「大目次は出来ていて、この話題は第1章のどこかに入る」とか。
そういう状態でいいですから、とにかく書いてみましょう。
文章の並び順や脚註の細かいルールはあまり気にしないで、わかるように書いてみる。
前にちょっとやり方を紹介した「手書き→マインドマップテキストエディタ」というやり方もあります。
文章をモリモリ書くための4つのステップ - カフェパウゼをあなたと
これは編集のしやすさをも念頭に置いてますが、最初は、とにかく手書き(できるだけなめらかに書けるボールペンや万年筆をお勧め)で書き殴ったり、テキストエディタ(文字を打つ以外の機能があまりないようなもの)を使ってやってみましょう。
頭の中でもやもやしているだけでは、誰にも見せることができません。どんなに親切な指導教員でも、見ることができない文章を添削することはできないのですから。

第二フェイズ:意味付けを捉えなおし、並び替え、文章を整えて編集しよう

うわーっと第一フェイズを行うと、とにかく材料だけはそろいます。あとは、コレを料理していけばいいのです。
手書きであれば、ペンを色ペンに持ち変える。テキストエディタであれば、アウトラインが使えるソフトを起動します。そして、並び替えてみたり、重なるところをつないでみたり、脚註を整えたり・・・とにかく、手を入れていきます。
追加で新しく書きたくなったら?脇にメモ帳を置いておいて、アイデアベースでいいから書き付けておきましょう。編集脳になっているときのアイデアは、非常にメタな視点になっていることが多く、その文章の序文や結末に大きく影響することが多いです。

どこで人に見せるのか?

第一フェイズと第二フェイズを続けていくと、どうにかこうにか文章ができていきます。しかし、第二フェイズにまで達したものだけを見せようとすると、どこかでモチベーションが下がったりします。そこで、かなり切羽詰まっているときは、「とにかく第一フェイズでいいから持ってきて」と言ってくれる人を探して、極めて短期間に無理矢理にでも成果報告をする、というのをおすすめしています。
なぜって?・・・人に話すとものすごく進むことがあるからです。
書こうとして巧くいかないときは、改めて別角度での表現をしてみるとすっと見えてくることがあります。誰かに話そうとする、というのは、その点で非常に優れた「前への進み方」です。

研究ハックフォーラム・若手法学研究者フォーラムはそういう場を提供してます

このブログ記事の↓のほうにリンクが張ってありますとおり、私はふたつのフェイスブックグループを運営しています。そこで同好の士を探して、お互いの文章を見せ合うというのも一つの手です。ちょうど、科研費等の「作文」シーズンでもありますし、相互扶助をするにはピッタリの時期かも知れません。

このやり方につきあってくださった師匠にはとても感謝しています。師匠が、「とにかく1週間に5000字書いて持ってきなさい」と言ってくれなかったら、到底書き切れませんでした。「とにかく書いて書いて見せる」というやり方が功を奏することもあります。うじうじ考えて前に進めない日ももちろんあります。ノってきた日にモリモリ書いて反撃しましょう。
やっと涼しくなってきました。夏に悶々とした分を、少しづつ取り返していきましょう。
きっと書けますから。疲れたときには遠慮無くカフェパウゼを。